機構長ご挨拶
日本の埋蔵文化財包蔵地(遺跡)の数は、およそ46万か所とみられています。日々、全国各地で道路建設や公共、民間を問わずいろいろな施設の建設が行われていますが、なんらかの形でこの膨大な量の遺跡にかかわります。これら開発行為に当たっては、事前の埋蔵文化財の発掘調査を実施することが法令化され、記録にとどめて保存措置をすることが定められています。実際、文化庁の統計では、毎年10,000件前後の発掘調査が行われています。ごくまれに極めて重要な遺跡が発見され、条件が整えば史跡として保存されることもありますが、大部分は残念ながら調査後に破壊される運命にあります。だからこそ、体系だった技術と知識に基づく発掘調査によってしっかりと記録保存しなければなりません。
調査成果は、報告書としてまとめられ、出土遺物とともに、広く社会に還元して生涯学習や学校教育、さらには街づくりや観光事業などにも活用することが求められています。
これらを実現する職務を担う人は、正確で正しい一連の知識と技術を有し、それを遂行するための高邁な理念と高い専門性が必要です。実際、現在、これらの埋蔵文化財調査で活躍しているのは、大学などの研究・教育機関で専門的に勉強してきた人たちです。
以前は、埋蔵文化財の調査に関しては、とくに「資格」といったものは必要とされていませんでした。しかし、近年街づくりのための都市計画や観光などで重要な文化資源として活用する動きが活発化してきている中で、調査に携わる人たちの知識や技術の確かさをアピールし信頼を確保する必要が求められるようになってきました。
2008年に誕生した考古調査士資格は、正にそのような社会からの要請に応えるものです。資格取得者は、すでに1,500人を超えております。また近年、自治体の担当者の採用条件の一つに、考古調査士資格を取り入れるところも出始めています。
考古調査士資格認定機構は、埋蔵文化財調査に携わる将来の専門家たちに対して、大学機関などで勉強した証として、この資格を認定して与える機関です。